まず、ネックといえば多くの人が思い浮かべるであろう、クランクホーゼルです。名前のとおり、ヘッドから伸びたネック部分がクランク状に曲げられており、田野さんいわく、「ネック部分の重量が20~30gくらい」になるとのことです。
「これによって、ヘッドの重心が上がりやすくなります。その意味で、フェース上のインパクト位置が高めの人に合うネックと言えます。また、フェースバランスになりづらいのでフェースの開閉がしやすく、操作性も高いと言えます」
クランクホーゼルは、いろいろなヘッドで見るタイプですが、一方で大きめのマレットや小さいヘッドでは採用されることが少ないタイプでもあります。田野さんによれば、ここにもやはり重量が関係しているのだそうです。
「クランクホーゼルの重量分を、ヘッドを大きくすることなどに使うことで、慣性モーメントを高めたりできますから、よりやさしくなると言えます。一方、たとえば#5のような小さいヘッドで採用されないのは、ネック側に重量が来るためです。重心位置がヒール側になってしまいますから、小さいヘッドになればなるほど、フェースの開閉がしやすくなりすぎたりします。一定以上に大きいものも小さいものも、クランクホーゼルとの相性が良くないということになりますね」
クランクホーゼルの形状は、アドレス時に利用できるという意味で好まれる場合もあるそうです。
「上から見たときに、ネックの一部がフェース面に対して直角になっています。この部分をアライメント的に使えるので、ターゲットに対してフェースを合わせやすいという人も、けっこういらっしゃいます」
続いては、ダブルベントです。現在では、クランクホーゼル以上にさまざまなヘッドと組み合わされているタイプです。ネック部分がなく、2カ所(ダブル)で曲げた(ベント)シャフトを、ほぼ直接、ヘッドに繋いでいるものです。ダブルベントもクランクネック同様に、重量という面がその特徴を形づくっていると言えます。
「ネック部分がない分、ヘッドの重心を下げることができますし、ヘッドを大きくするうえでもダブルベントがいちばん有効と言えます。ブレードタイプでも、重心を低くしたいということであれば、このタイプがいいですし、どんなヘッドにも合いますね」
ダブルベントでは、シャフトの曲がっていない部分の軸方向がフェースのセンターを向いていることも、大きなポイントの1つです。
「それによってフェースバランスになりますから、どちらかといえば、オートマチックに真っすぐ振りやすい性格になります。操作をあまりしない人に向いていると思います。加えて先ほども申したように低重心になりやすいですから、フェース上の打点位置が低めな人に合うと言えますね」
さらにもう一点、クランクホーゼルとの形状の違いが生む効果もあります。
「先ほど、クランクホーゼルをアライメント的に利用する人がいるということをお話ししましたが、逆に、クランクホーゼルが目に入ることで、ターゲットに合わせにくいと感じる方もいます。その点、ダブルベントはヘッドやフェース面がよりすっきりと見えますから、クランクホーゼルが苦手という人には良いと思います」
S(ショートスラント)は、比較的最近、登場してきたタイプです。とても短いネックが、ヘッドのヒール側から斜めに突き出ている形状です。
「マレットによく採用されているネックになります。重量があまり取られず、シャフトの軸方向もヒール側に来ますから、重心を下げつつ、フェースバランスにならないようにすることができます。Sにすれば、大きいヘッドにしながら操作性を持たせることもできるということですね。ヘッドの安定感が欲しい一方、思いどおりにヘッドを操りたいという考えもある人に合うネックです。打点位置に関しては、重心位置がそれほど高くならないので、フェースのやや低い位置でインパクトする方に良いと言えますね」
シャフトとフェースの位置関係にも、注目です。
「Sの場合はハーフオフセットと言って、シャフト軸の中央にフェース面が来ます。グースがそれほど強くなりませんから、やや左に引っかけにくいタイプと言えます。その点、クランクホーゼルやダブルベントは、しっかりとオフセットが入っていますから、ボールがつかまり、右へ出るミスが減るタイプとなります」
Sと少し似ているようにも見えるのが、フローネックです。湾曲したネックがヘッドから斜めに伸びているもので、L字マレットの#9などでよく使われていますし、昨年モデルのTRI-HOT 5K THREEパターでも採用されていました。
「雰囲気は似ていますが、Sよりは長めのネックなので、より重量が取られることになり、大きいヘッドとの相性は良くありません。これもフェースバランスにはなりませんから、自分の意図したとおりに動いてくれるタイプと言えます。操作性はクランクネックと同等か、それ以上と言えるかもしれません。オフセットは、Sと同様にシャフト軸の真ん中にフェース面がある状態となっていますので、引っかけることは少なくなります」
また、フローネックの形状はダブルベント同様に、アドレスにおいて効果を発揮すると、田野さんは言います。
「やはり、湾曲しているのが大きいですね。クランクホーゼルのように直線感がなく、角張ってはいませんから、構えたときにヘッドやフェースがシンプルに見えやすく、これによってターゲットに向けて構えやすいという人は多いです」
センターシャフトは、ネックがなくシャフトが直接ヘッドに繋がれている点はダブルベントと同じですが、その性格は大きく異なります。
「まず、オフセットがないことが、いちばん大きな特徴ですね。シャフトは曲げられることなく真っすぐヘッドに装着されていますので、フェース面がシャフトよりも飛球線方向に出ています。グースがまったくないということになるので、ボールはつかまりにくいですから、パッティングで引っかけることが嫌な人にはベストなタイプです」
もちろん、名前のとおりにヘッドの真ん中へシャフトが通っていることも、大きなポイントです。
「シャフトがトップブレードの真ん中よりも少しヒール寄りに繋がっていて、シャフトの軸線はソール側の真ん中に向いていますから、フェースバランスになりやすいです。一般的に難しそうなイメージを持たれるタイプですが、じつはストレートにストロークしたい人に合うと言えます。ネックがないので大きなヘッドとの相性も良いですし、ヘッドが大きくなればなるほど余計な動きをしなくなります。また、シャフトがトップブレードの真ん中近くを通っていますから、それが良い目印になって、フェースの芯の部分とボールを合わせやすかったり、芯で打ちやすかったりするという面もあります。打点位置は、低めの人に合うと思います。ネックがないことでヘッドの重心が低くなりますから、下側に当たる人のほうがボールの転がりは良くなります」
最後に、TRI-BEAMパターで登場したラケットホーゼルにも触れておきましょう。最大の特徴は、三角形の下辺がトップブレードと繋げられている点です。
「広くヘッドを支えていますから、打点ブレに強くなります。また、この三角形の形状によって、通常のネックよりもフェース面を意識しやすいという人もいますね。重量的には、通常のクランクホーゼルと同等ですから、ヘッドの重心もクランクホーゼルと同じく高めになります。フェースの上側でヒットする人に合うと言えます。また、クランクホーゼルと同様にオフセットがありますので、ボールのつかまりも良いです」
なお、ラケットホーゼルにもセンターシャフトタイプが用意されていますが、こちらは、「一般的なセンターシャフトとは、ちょっと違います」と、田野さんは指摘します。
「センターシャフトといっても、ラケットホーゼルではオフセットがありますから、ボールのつかまりは良くなります。引っかけを抑えたいということであれば、TRI-BEAMパターではない通常モデルのセンターシャフトを選ばれるほうが良いと思います」
では、ラケットホーゼルのセンターシャフトは、とくにどこが利点と言えるのでしょうか。田野さんが、プロの話も交えながら教えてくれました。
「ラケットホーゼルのセンターシャフトの場合、トップブレードのちょうど真ん中にラケットホーゼルの一辺が繋がっています。これによって、トップブレードの真ん中にアライメントの線が入っているような状態に見えるんです。多くのプロの人たちは、ボールの線をサイトラインに合わせてセットしますが、そのときに、このラケットホーゼルの一辺の線が利いてくるのだそうです。先ほども言ったように、通常のセンターシャフトはトップブレードの真ん中ではなく、ややヒール側にずれて繋がっていて、真ん中とのスペースはとても狭いですから、サイトラインを引くのがとても難しいんです。サイトラインの溝を入れる際に、ちょっとでもずれれば、シャフトを装着する部分にかかってしまい、発売できない製品となってしまいますから。それならば、フランジ部分にあるサイトラインに合わせれば良いと思われるかもしれませんが、プロによっては、これを好まない人もいるんですよ。理由を聞くと、フランジ部分のサイトラインは位置が低いためか、ボールの線からずれているように見えるのだそうです。そういうこともあって、プロの間ではTRI-BEAMパターのセンターシャフトタイプは、けっこう人気になっています」
もちろん、ヒール側にラケットホーゼルを装着したタイプも、キャロウェイ・スタッフプレーヤーの上田桃子プロをはじめ、多くのツアープロが愛用しています。
「ラケットホーゼルのセンターシャフトは、フェースバランスになりますから、ストレートなストロークをしたい人に向いていると言えます。一方で、ヒール寄りの通常のラケットホーゼルはフェースバランスにはならないので、ヘッドの操作性を求める人が好むタイプということになりますね」
今回、すべてのネックタイプを網羅したわけではありませんが、ここでご紹介したものだけでも、これだけの違いがあります。自分で良いと思っていたものとはまったく別のネックが、じつはフィーリングにピッタリ合うといったことも、あるかもしれません。みなさんもぜひネックに注目して、お店などでさまざまな種類を試してみてはいかがでしょうか。