まずは見た目ですが、今回のユーティリティはすべて、前作までのやや角張った長方形に近い形状から、丸みを帯びたフェアウェイウッドのような形状にチェンジしています。構えたときに、一般的なほど良い大きさに見えるのがスタンダードのPARADYMユーティリティで、PARADYM Xユーティリティはヘッドの前後長が少し長く、かなり大きめのフォルム。コンパクトなヘッドのフェアウェイウッドなどよりも、よほど安心感があるかもしれません。
そして意外なのは、PARADYM MAX FASTユーティリティです。3つのヘッドを並べてみると、このモデルがいちばん小さく映ります。PARADYM MAX FASTユーティリティのみ、アジャスタブルホーゼルを採用していないということもすっきり見える理由かもしれません。ただし、不安になるようなサイズではまったくなく、振り抜きやすそうなイメージを与えてくれていると言えそうです。
フェース面は、シャフトの左端からまっすぐトップラインが伸びているのがPARADYMユーティリティで、他の2つのモデルは、ややオフセットがつけられています。PARADYM XユーティリティとPARADYM MAX FASTユーティリティは、これによりボールのつまかりを良くし、安心感ももたらしてくれているのでしょう。重量感についてはやはり、PARADYM MAX FASTユーティリティが一段軽い印象です。
実際に打ったのは、すべてロフト21度のモデル(PARADYMユーティリティは21°、PARADYM Xユーティリティ、PARADYM MAX FASTユーティリティは4H)です。フィーリングは、すごく弾いていて硬さが伝わってくるというものではなく、表現するならば、「ミシッ」とか「バシッ」という感じでしょうか。フェースに乗っている雰囲気があり、とても打ち応えのあるものでした。ボールを打つ楽しさを、打感や音で増幅させてくれているようでもあります。フェース素材は前作のROGUE STシリーズと同じくカーペンター455スチールですが、PARADYMシリーズのほうが心地良かった印象でした。要因は、よりフェースの端のほうまでたわませることを目的に、今回初搭載されたコウモリの羽根のような形状のJAILBREAKテクノロジーにあるのかもしれません。
また、どのモデルも本当にボールがよく上がります。3モデルのなかでの差は、あまり感じませんでした。21度は、アイアンでいえば現代なら4番あたりのロフトですが、おおげさでなく7番アイアンくらいの角度で飛んでいきます。自分でボールを上げようといった意識は、まったく必要ありません。これなら、グリーン上でもしっかり止まってくれるはずです。正確な飛距離については計測していないためわかりませんが、筆者のなかでは、弾道から想像すると、かなり出ている感覚がありました。また、フェースの下目に当たったときに、充分な高さを出してくれていたことも特筆すべきことでした。
冒頭にも書いたように、大きく曲がってしまう気配もありません。ちょっとフェースが開いたと感じたり、閉じたと思ったりしたときでも、着弾地点のブレを抑えるように設計されたAIフラッシュフェースのおかげか、ボールが飛んでいく方向が大きく変わることはありませんでした。たとえばヒールでのヒットでも、スライスにはならず、わずかにフェードしたかどうかといった球筋です。強いて3モデルの違いを言うならば、PARADYM Xユーティリティ、PARADYM MAX FASTユーティリティは、ややボールのつかまりが良く、PARADYM ユーティリティは少し左には行きづらく、ストレートボールが出やすいという印象でしょうか。また、今回ソールの前側に初搭載となったタングステン・スピードカートリッジの影響か、3モデルいずれも、これまでのユーティリティ以上にフェース面をボールに向けやすい感覚もありました。
最後に、PARADYMのユーティリティに採用されたカットウェーブソールデザインについても触れておきましょう。威力を確かめるべくラフでも打ってみたのですが、冬の枯れた芝ということで、残念ながら従来のユーティリティとの抜けの違いを感じるまでには至りませんでした。春になって芝が元気になったときに、いま一度確認してみたいところです。
まとめると、3モデルいずれも、球が上がりやすく、ミスにも強くて、曲がりが少ないユーティリティということができます。どちらかといえば、構えたときの印象や重量感などが、チョイスする際の大きな要素になるのかもしれません。とくにフェアウェイウッドや、アイアンのロフトの少ない番手に苦手意識がある方にとっては、とても心強い味方になってくれるはずです。