JAWS FORGEDウェッジ(52度と58度)のバックフェースに、レーザーでイラストを入れたものとなっており、それぞれのメインの図柄は凱旋門とエッフェル塔です。加えて、キャロウェイ、JAWS FORGEDのロゴ、ライン、ウェイトポートのメダリオンを、フランスのトリコロールである青、白、赤で配色。2本セットにしての発売となります。
「Artウェッジ」の企画が実現したきっかけは、いまから7年前の2017年ごろに遡ります。まさにその中心人物となった、現在キャロウェイのプロダクト担当を務める石野翔太郎さんに、経緯と製作方法の詳細を伺ってみました。
始まりは、当時の上司からの「ちょっとやってみなよ」という一言でした。
「そのころ僕は、クラブの修理と、ツアーのサポートとしてパターにラインやドットを入れたりする作業を担当していたのですが、あるとき上司が、カールスバッド(アメリカ・カリフォルニア州)の本社にいるアンソニー・タラントという人のSNSの画像を見せてきたんです」
アンソニーさんは、本社内でツアープレーヤーのクラブを調整したり組み立てたりする人物で、その仕事のかたわら、ウェッジのバックフェースにさまざまなデザインを施すこともしていました。これらは正式な製品ではなく、有名人にプレゼントしたりすることが目的のもので、つくった作品の写真をたくさんSNSにアップしてもいました。
<アンソニー Instagram >
「その上司がアンソニーの存在を知っていて、日本の作業スペースにもシリアルナンバーを刻むためのレーザーの機械があるから、同じようなことができるんじゃないかと言ってきたわけです。僕もデザインなどに興味がありましたから、アンソニーの写真をもとに、見よう見まねで始めたという感じです」
しかし、当然ながら最初からすぐにうまくはいきません。練習として、金属の板にさまざまな図柄や文字をレーザーで入れてみるのですが、焦げてしまったり、何が描かれているのかわからないようになったり……。
「ついには、レーザーの機械のメーカーであるキーエンスの方をお呼びして、どうしたらうまくできるのかを教えてもらったりもしました。そのとき初めて知ったことも多かったですね。このレーザーの機械は調節の幅がすごく広く、対象の素材やカラーによっても色の出方が全然違ったりするんです。そのときからまた、テストを繰り返す日々が続きました」
レーザーで入れていく画像は、パソコンに取り込み、イラストレーターやレーザーの機械に付属するソフトなどを使って調整していくのですが、それ自体は、「それほど大変ではありません」と石野さんは言います。
「いちばん難しかったのが、やっぱりレーザーの当て方ですね。周波数とかパワーとかいったものをどういった数値にして、何回当てればいいかといったことです。レーザーは、当てる距離もちゃんと合わせないと当たらないんですよ。短すぎても長すぎてもダメです。また、ご存じのようにウェッジのバックフェースはスペースが限られていますから、場所がずれて思ったところに入れたいものが入ってくれないという問題も出てきます。ようやく、人にあげてもいいなというレベルになったのは、1年くらい経ってからでしょうか。もちろん、あくまで本来の業務ではなく、今後のビジネスに繋がるかなという感じで、時間を見つけてやっていたことですから、トータルでいえば数カ月かもしれません。それでも、けっこう時間がかかった印象ですね」
こうしてテクニックを磨いているなか、石野さんにまた上司から声がかかりました。
「アンソニーのところに修業に行ってきたら? と。まあ、修業と言っても1週間くらいですが。行く前に、僕のつくったものの画像をアンソニーに送ったら、『すごいな』と言ってもらえて、それで正式にカールスバッドのアメリカ本社に行くことになりました。勉強になりましたし、おもしろかったですね」
さらに腕を上げていった石野さんは、数年後に現在の仕事であるプロダクト担当の部署に異動。満を持して、「Artウェッジ」の企画を提案し、このほどついに製品化に至ったということになります。
「もちろん、今回の製品化でレーザーの処理などをするのは、僕ではありません。イラストなどのデザインと、どのようにレーザーを当てていくかといったことは考えましたが、実際の生産は、レーザー担当、メダリオンや色入れ担当といった具合に分けて、流れ作業でやっていきます。先ほども触れたように、レーザーは当てる距離や範囲が大事なので、ウェッジのヘッドをどう置くかという位置決めがけっこう難しいのですが、ヘッドを置くだけで正確な位置になるよう、治具(加工する対象を固定したりするための器具)も用意しているので、誰でもスムーズにつくっていくことができるようにしています」
「Artウェッジ」は、今後も新たなデザインで第2弾、第3弾と続いていくことが期待されますが、石野さんの頭のなかには、どのような構想が浮かんでいるのでしょうか。
「今回はレーザーがメインでしたが、砂を吹きつけて異なる風合いを出せるサンドブラストを使うことも考えられます。ただ、マスキングの作業が大変ですし、あとは個体差なく同じようなものにできるかどうかが難しいところです。ある程度の数をつくるとなると、時間もかなりかかります。そのあたりをクリアできるようなら、ぜひやってみたいですね。あとは、文字などを刻印するスタンピングも、今後やっていければと思っているところです」
「Artウェッジ」の第1弾の8月1日(予定)より数量限定で、キャロウェイ オンラインストア、キャロウェイ/トラヴィスマシュー青山店、キャロウェイ心斎橋店限定で受注開始します。ぜひ、キャロウェイWEBサイトなどで詳細をチェックしてみてください。
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