まず、番手はX FORGEDアイアンと同様、I#4~9、PWの計7本で、ロフト設定もI#7が33度と変わりません。ヘッドのサイズ感も同じです。また、バックフェースのデザインもX FORGEDアイアンのものを基本にしていることが、写真からも見て取れることでしょう。
ただ、大きく異なるのは、「X PROTOTYPEアイアン」がコンボセットである点です。I#4~7においてはX FORGEDアイアンとそっくりなキャビティタイプで、刻印されたX PROTOTYPEのロゴが別モデルであることを教えてくれています。一方、I#8、9、PWは、X FORGEDアイアンの形状から、キャビティの外周部分を取り払ったようなマッスルバックとなっています。なお、I#4~7ではロングアイアンとミドルアイアンでキャビティの形状も少し変えられており、長い番手の寛容性を高めています。
ソールのリーディングエッジ側とトレーリングエッジ側の面取りも、X FORGEDアイアンから踏襲されていますが、少し入れ方が異なっています。また、ソール幅もX FORGEDアイアンとは違うものになっており、番手表示がX FORGEDアイアンより少し小さくなっているところも特徴的です。
そして何より、「X PROTOTYPEアイアン」をスペシャルなものとしているのが、すべてを日本で製作している、まさにMade in Japanという点です。X FORGEDアイアンは海外でヘッドがつくられ、組み上げは日本などでも行われていますが、この「X PROTOTYPEアイアン」の場合、ヘッドは栃木県鹿沼市の株式会社ササキにて製造され、シャフト、グリップの装着も、すべて国内で行われます。
キャロウェイゴルフのプロダクト担当は、今回、「X PROTOTYPEアイアン」を製作した理由を、次のように語ります。
「X FORGEDアイアンの出来が良かったので、完全に『Made in Japan』の究極系を、数量限定で開発できないかと模索していました。コスト的な懸念もあり、最初はアメリカの本社も半信半疑でした。しかし、日本企画のX FORGEDアイアンの評価が、アメリカのツアーで高まっていったことが追い風のようになりました。『X PROTOTYPEアイアン』のモックアップを見ることができるようになると、本社の開発関係者の間で、『すごくクールなアイアンがあるぞ!』とか、『アジア専用で、アメリカなどでは展開されないようだから、羨ましい』といったふうに、社内で話題になっていきましたね」
設計は、アメリカ本社の開発チームと日本のキャロウェイが一緒になって行ったそうです。
「ヘッド形状やバックフェースのデザインを決めると同時に、アメリカの開発チームが日本のササキを訪問して見学。そこから、開発チームとササキのやり取りが始まりました。試作を行い、ヘッドの仕上げ方もいくつか検討してテストをし、本生産に向かっていったという流れです」
このアイアンの特徴、良いところをプロダクト担当者に尋ねると、「鍛造+機械加工の組み合わせでできているので、精密で綺麗なヘッドになっているところと、鍛造が1回ということで、いままでにない打球感の柔らかさを実現(注・叩く回数が多くなると、素材が硬くなって打感が悪くなる)しているところですね」という答えが返ってきましたが、これらはすべて、株式会社ササキで製造されることになった理由にも繋がっています。
「通常の鍛造工程では、そのアイアンに特化した型をいくつか作成し、それを順に使って素材を叩いていったのち、研磨をしてアイアンの形状に仕上げていきます。一方のササキは、先ほども言ったように鍛造1回+機械加工というユニークな会社です。私の記憶では、この方法はほかに聞いたことがありません。つくろうとしている製品が、すでにササキが持っている金型に合えば、それを利用して素材を1度叩き、その後、機械加工で形状を仕上げていくことができます。コストがかさむ金型製作をしないので、小ロットが可能になりますし、鍛造であるにも関わらず、ミルド加工の跡を残すことでスペシャルな見た目になるところも魅力です。ササキは、このアイアンの企画にピッタリな会社だったということになります」
この話を聞くと、俄然、実際の製造工程を見てみたくなる方も多いのではないでしょうか。実際に株式会社ササキを訪ね、「X PROTOTYPEアイアン」がつくられていく様子も取材してきましたので、次回、そのレポートをお届けする予定です。ぜひ、お楽しみに。
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