2025.08.22

キャロウェイから、新たなウェッジが誕生です。昨年登場した、最上級であることを表しているOPUSというブランド名に、SPの2文字を加えた「OPUS SPウェッジ」です。このSPは、スピン量を打ち出し角で割った数値を示すSpin Per Degreeという言葉から来ているとのことで、ニューモデルの性能を説明するうえで重要な意味を持つもののようです。どんな進化を果たした製品となっているのでしょうか。
キャロウェイのプロダクト担当である石野翔太郎さんは、このSpin Per Degreeを、「プロのフィッティングなどにおいて大切にされている数値」と説明してくれました。
「もちろんみなさんも、ドライバーなどでボールスピード、スピン量、打ち出し角が重要というのはご存じだと思いますが、ウェッジでもそういう重要な数値がありまして、スピン量が多く、打ち出し角が低いウェッジ、つまりSpin Per Degreeの数値が大きいウェッジが、より性能が高い製品、よりコントロールしやすい製品とされています。今回、最上級を意味するOPUSにSPという文字を加えていることで、このウェッジが低く出てスピンが入る、よりコントロールできるモデルであることを示しているわけです」(石野さん)

キャロウェイのプロダクト担当 石野翔太郎さん
もしかしたら、「打ち出しが高いほうが良いのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これはゴミ箱にゴミを投げ入れるときのことを想像するとよくわかります。低い放物線でゴミを放るのが普通であり、高い放物線でゴミ箱を狙う人はいません。低いほうがゴミ箱に入れやすいことを自然に身に着けているからです。

「ボールが上がると、どれくらい飛ぶかわからないですから。飛びすぎることもあれば、ショートしてしまうこともあります。一方で、低い弾道で想定したところに着地したとしても、スピンが入らなければ、そのまま転がってしまって寄せられません。弾道は低いけれど、止まってくれる、というのが大切なのです」(石野さん)
より大きなSpin Per Degreeの数値を実現するために、「OPUS SPウェッジ」では、前作のOPUSウェッジから多くの部分に変化を加えています。まず1つ目としては、軟鉄鍛造フェースと軟鉄鋳造ボディを組み合わせた2ピース構造になっているところ(ロフト54~60度)が特徴的です。OPUSウェッジは、フェースとボディが一体で軟鉄鋳造によりつくられています。

「この2ピース構造の導入により、フェースとバンス部分の間に、SPIN POCKETと呼んでいる空間をつくることができました。空間の分、余剰重量を生み出すことができ、よりホーゼルを長くしたり、バックフェースの上部、トップブレードの裏側に厚みを持たせたりすることができています。ヘッドの重心を高くすることで、よりギア効果を大きくし、スピン量を上げようという狙いです。正確な数字は言えませんが、重心は数ミリ上がっています。ゴルフクラブにおいて数ミリ動かすというのは、かなり大変な作業であり、今回はすごく重心を上げることができたと言えます」(石野さん)

SPIN POCKETがあることで、打感に影響があるようにも思われますが、石野さんによれば心配無用のようです。
「実際、プロから打感に対する違和感は聞こえてきていません。よりフェースにボールが乗るようなフィーリングがあるからかもしれませんね。また、プロのみなさんは重心が上がったことを感じていて、『上からヘッドを入れやすくなっている』『フェースがボールの下を潜りにくくなっている』などと話す選手が多いです。フェースに乗る時間が長く感じられるほど、選手たちはコントロールがしやすい、球を扱いやすいという印象となるようです」(石野さん)

「OPUS SPウェッジ」では、溝(ロフト54~60度)にも変化が見られます。OPUSウェッジでは、溝の入れ方が緩やかながら、角が鋭い37Vグルーブを採用していましたが、今回は、ルールを遵守するために角には丸みを持たせつつ、溝の入れ方をより垂直に近づけた17Vグルーブが刻まれています。

「PGAツアーの選手たちから、ラフからの弾道を安定させたいという声があり、より良い溝を求めて研究・開発が行われてきました。37Vは角が鋭いため、スピンが入ったときはものすごいのですが、一方で、溝の入れ方が緩やかな分、ボールとの間に異物が挟まったりしやすく、スピンが入ったときと入らなかったときの差が激しい部分もありました。17Vは溝の入れ方が垂直に近い分、芝や水が入るスペースに余裕ができるなどして、よりボールに食いついてくようになっていますし、高くなった重心とのコンビネーションによって、ヘッドの挙動と溝がうまく作用し、タフな状況からでも安定した弾道とスピン量を実現してくれます」(石野さん)

なお、溝のピッチはOPUSウェッジ同様に狭いもの(OPUSウェッジよりもさらに少し狭い仕様)となっており、溝の本数もOPUSウェッジと同じく17本と、JAWS FORGEDウェッジやJAWS RAWウェッジよりも2本多くされています。溝と溝の間の部分には、これまでマイクロフィーチャーが溝の角度に対して斜めに入れられていましたが、今回はここにも新たな技術が投入(ロフト54~60度)されています。格子状に入れられたディープフェーサーレーザーです。

「レーザーを強く当てて、粗さを出しているものです。これによって溝と溝の間の部分の摩擦力がより増えているので、乾いたコンディションなどで多くのスピンを発生させますし、よりフェースにボールが乗りやすくもなっています。また、マイクロフィーチャーは斜めに入れられていたので、フェースを開いたときに、よりスピンが入りやすかったのですが、今回は格子状なので、いろいろな角度に対応してくれるという面もあります。スクエアに構えたときにもスピンが入りやすいですし、フェースを開いたときにも威力を発揮してくれます」(石野さん)

なお、ロフトが立っているほうの48~52度のモデルにおいては、溝が20Vとなっていて、溝と溝の間はディープフェーサーレーザーのない平らな仕上がりです。OPUSウェッジの48~52度のモデルと比較すると、変化がないということになります。ただし、ヘッド形状は異なるものとなっています。OPUSウェッジではシェイプ6と呼ばれる、リーディングエッジにもトップブレードにも少し丸みを持たせた形状が採用されていましたが、「OPUS SPウェッジ」では、54~60度においてシェイプ6を引き継いだ一方、48~52度ではリーディングエッジもトップブレードも少し直線的なものになっています。

「見た目の流れをスムーズにしたいという声を受けて、アイアンに組み込まれているピッチングウェッジに近い、直角三角形のような形状にしています。JAWS RAWウェッジに似ているかもしれませんね」(石野さん)
グラインドは計5種類で、OPUSウェッジで導入されたS、W、C、TグラインドにXグラインドが加わったラインアップとなっています。ロフトは、ここまでも何度か触れましたが、48、50、52,54、56、58、60度の7種類が用意されています。

すでに多くのキャロウェイ・スタッフプレーヤーも、「OPUS SPウェッジ」にスイッチして実戦に投入しているとのことです。
「石川遼プロは、すべてを『OPUS SPウェッジ』に変えていますし、河本力プロも、『OPUS SPウェッジ』で7月の全英オープンを戦っていました。河本プロは60度を使っているのですが、『ロフトが寝ているのにボールが滑らないで、フェースに乗りつづけてくれる』『安定してスピンが入る』と言っていましたし、僕が話したときは雨のコンディションだったのですが、弾道の高さも安定していました。ロフトが大きいウェッジでは、濡れれば濡れるほど、滑りやすくなるのですが、『ボールが引っかかって、前に行ってくれるのは助かる』とのことでした。また、杉原大河プロも、『ボールの下を抜ける感じがないです』と言っていましたね」(石野さん)

左/河本力プロ、右/杉原大河プロ
石野さん自身も、実際に打ってみて、「OPUS SPウェッジ」の良さを感じているようです。

「データでもはっきりと表れているのですが、前作に比べてボールが低く出てくれますし、フェースの乗り感も感じられます。ロフトのあるウェッジで低く打つのは、意外と難しいじゃないですか。練習をしていて何球かに1回は出るのですが、それをいざコースで使えるかというと難しいですし、不安もあります。でも、『OPUS SPウェッジ』を使うと、低く出そうと考えなくても、ナチュラルに打って、そういう球が出てくれるんです。何も考えずに打っても、プロのような球が出るうれしさがあるウェッジですね。OPUSウェッジもスピンはすごく入りますが、『OPUS SPウェッジ』は良い意味で簡単になっていて、特殊な技術やプロのようなヘッドの入れ方をしなくてもスピンが入りやすいです」(石野さん)

「OPUS SPウェッジ」の発売は、9月5日からとなっています。今回のモデルでは、バックフェースのキャロウェイのロゴが一新され、CALLAWAYの文字をが直線的に入れつつ、シェブロンマークは単独でソール近くに入れられています。プロのみなさんからも好評ということで、こちらも含めて、ぜひ店頭でじっくりとチェックしてみてください。