2026.01.19

チタンフェースでもなければ、カーボンフェースでもない。キャロウェイの2026年モデル『QUANTUM(以下:クアンタム)』は画期的な三層フェースを実現。チタン、ポリメッシュ、カーボンを組み合わせたフェースはどのように開発したのか?
米国キャロウェイ本社で15年以上にわたり開発に携わってきたR&Dパフォーマンスエンジニアのジャスティン・デル・ロサリオに話を聞いた。

Justin Del Rosario
Principal, R&D Performance Engineer
―3層構造フェースの開発はいつ頃からはじめていたのですか?
キャロウェイでは1990年以降のチタンヘッドになってから特にフェースの開発に力を入れてきました。2002年に発売した『C4』ではコンポジットフェースを他社に先駆けて完成させています。2026年モデル『クアンタム』のチタンとカーボンを組み合わせたフェースについては、実は10年以上前から研究していたのですが、なかなか実現できませんでした。その理由はチタンとカーボンを接着するための理想的な素材が見つからなかったからです。ゴルフクラブによく使われているエポキシなども試したのですが駄目でした。
―どうやって、第3の素材となったポリメッシュを見つけたのですか?
元々、ポリメッシュは他の産業の接着剤として使われていました。おそらく、ゴルフクラブで接着用途で使われたのははじめてだと思います。ポリメッシュなら重量をかけることなく、チタンとカーボンの特性も損なわずに接着剤として機能する。この素材を見つけたことが3層構造のマルチマテリアルフェースを完成させるブレークスルーになりました。
三層フェースの割合はチタン74%、ポリメッシュ12%、カーボン14%。
―チタン、ポリメッシュ、カーボンによる三層構造フェースのメリットは?
1番のメリットはチタンを薄くすることができることです。チタンフェースだけだと薄くしたときに耐久性の問題が出てきてしまいます。しかし、ポリメッシュ、そして硬いカーボンがあることによって、チタンを薄くしても耐久性が確保できます。
―チタンを薄くすると、どういう効果が生まれますか?
チタンを薄くするとたわみ量が大きくなるので反発性能が高くなります。また、反発性能が高くなっても、チタンの後ろにカーボンがあることによってたわみ過ぎを抑えてくれます。カーボンはすごく硬い素材です。カーボン層があることによって、チタンのたわみを受け止めて、そのパワーを失うことなくボールに伝えてくれます。だからボールスピードが速くなる。このメカニズムを実現するためにキャロウェイでは10年以上もマルチレイヤーフェースを模索していたのです。
2025年モデル『ELYTE(以下:エリート)』もボールスピードは世界でトップクラスだと評価されていたが、『クアンタム』のチタンフェースはさらに14%も薄くなった。それが驚異的な反発性能、ボールスピードアップにつながったのだ。
コントロールポイント1個1個の補正力が上がった。
―開発段階で最も大変だったことは?
『クアンタム』の開発ではデータ上で5万9000個以上の試作品ヘッド、227万回のインパクトシミュレーションを行いましたが、それは三層フェースにおける理想的な部分肉厚を実現するためです。キャロウェイでは『E・R・C』で特許を取得したVFTフェースの構造をずっと継承しています。VFTとは「Variable Face Technology」の略称であり、日本語で言えば部分肉厚のこと。フェースの場所によって肉厚を変えることによって、キャロウェイは高反発エリアを広げてきました。三層フェースにおいてもチタン、ポリメッシュ、カーボンを部分肉厚にすることによってミスヒットに強いフェースにしています。その肉厚を最適化するために膨大な試作品とインパクトシミュレーションを繰り返しました。
―最近の『エリート』『パラダイム Ai SMOKE』のAIフェースでは打点によるミスを補正するコントロールポイントを重視していたが、三層フェースによってコントロールポイントはどうなったのか?
『エリート』のコントロールポイントは『パラダイム Ai SMOKE』の10倍以上になりました。『クアンタム』のコントロールポイントは『エリート』と大きくは変わっていません。しかし、チタンフェース部分が薄くなったことによって1個1個のコントロールポイントの能力が格段に高くなりました。コントロールポイントは、例えばヒールヒットしたときに通常ならスライス回転がかかってしまうところをフェースのたわみによって瞬時に補正しています。『クアンタム』はチタンフェースが薄くなり、たわみ量が大きくなったことで、補正する能力が上がったのです。AIフェースにとっても三層フェースは大きなメリットにつながっています。
革新的な『QUANTUM』の三層フェースの性能はツアープレーヤーも絶賛している。オフシーズンに『QUANTUM』のテストをした石川遼は、1月の今季初戦から『QUANTUM ◆◆◆』を投入した。石川遼は『QUANTUM』について次のように語っていた。

「第一印象としては打感が柔らかい。それなのに力強く飛んでくれます。打球音が低めで静かなのでしっかり振っていける。僕が好きなタイプのドライバーです。音で表現ならカキーンとかではなく、バキャーンです(笑)」

日本ツアーで4年連続平均飛距離1位になった河本力は、
「今までのキャロウェイになかった感じ。インパクトで2回押している。当たった瞬間に押して、フェースに乗ってからもう1回押す。これは飛びそうというか、飛んでました」

2025年の女子ツアーでメルセデス・ランキング3位になった河本結も、
「新しい感覚。たわんでいるのに押せる。ここ最近のキャロウェイになかった感じです」

キャロウェイの開発では創業以来、継承されている「DSPD」という哲学がある。DSPDとはDemonstrably Superior and Pleasingly Differentの頭文字。日本語だと「明らかに優れていて、その違いを楽しめることができる」という意味。その哲学があるからこそ、キャロウェイは『ビッグバーサ』から『QUANTUM』まで何度も世界初のテクノロジーを実現してきた。
『BIG BERTHA』は大型ヘッドの先駆者であり、ドライバーをやさしくしたモデルだった。『QUANTUM』の三層フェースはボールスピードの新しい領域に踏み込んだファーストモデル。キャロウェイのスピード革命は今はじまった。